四畳半神話大系
前置き
個性的な作品が多く、自分の中ではかなり当たり外れの多いノイタミナ作品。さらい屋と共に全話観たが、どちらもファーストインプレッションは「なにこれ微妙」だった。ただこちらはやたらと印象的な作品で、観ているうちにズルズルと世界に引き込まれ、気がつけばかなり楽しみにしていたというスルメ的なアニメ。
インプレ
まずはテーマソングだが、この時点ですでに独自路線まっしぐら。映像、音楽共に固有の世界観を形成しており、特にEDは何回も聴くことで耳から離れなくなる変な魅力がある。OPは世界観とマッチしながらも、EDと対極の、OPらしいテンポの良さがある。
作品の構成もかなり独特で、最初の数話は「このアニメはいったい何を言いたいんだ?」と思うこと請け合い。登場人物は毎回同じ面々で構成されるが、その内容、人間関係はそれぞれ異なり、いわゆるパラレルワールド的な展開になっている。
その中でも主人公と対をなし、基本同じ立ち位置で常に主人公を悪路へと導く親友小津。大学生活を描く作品だが、この小津がいかにして主人公“私”を人生の底辺に落としていくかが見所にもなっている。
独特と言えば、この主人公に名前がなく終始“私”としか名乗っていないのも面白い。会話というよりナレーション的司会進行で進む物語は、夏目漱石の「こころ」ないしハルヒのキョンを彷彿とさせる。
基本が「どんな道を選んでも結局小津と堕ちていく」というところに終着してしまう作品だが、中盤から終盤にかけてはちょっと傾向が変わってくる。あくまで「バッドエンド」かつ「1話完結型」がこの作品の土台となっているが、3人の美女に囲まれるというハーレム状態からはそれぞれの物語が微妙にリンクし始め、最終回へと繋がる。ここから「単なる無意味な学生生活」をダラダラと描いていた作品が次第に締まりを見せ始め、メリハリが生まれてくる。
この作品では、“私”“小津”と並んで重要な立ち位置に“明石さん”という女性も存在する。モチグマンなるものへの興味とその他への無関心、そして蛾への絶対的恐怖を併せ持った少し変な知的美人であるが、いつもいつも明石さんと“私”の布石を用意しておきながらまったくかすらせもしない展開にはかなりヤキモキさせられる。
そして気がつけば悪の大将として成り上がっていたり、また小津との立場が逆転していたり。最後は視聴者にしか認識されていなかった、これまでのパラレルワールドを主人公自身が認識するという展開へと繋がり、そこでようやく明石さんの攻略へと行き着き物語は完結へ向かう。始まりのダラダラ感に対し、終わりは驚くほど気持よく締めてくるところも、この作品ならではの変な魅力といえよう。
総評
最初にも述べたが、絵から物語から主題歌から、何もかもが独特な、非常にオリジナリティに富んだ作品。それゆえに好き嫌いが分かれそうなところでもあると共に、スルメ的なアニメでファーストインプレッションがよくわからないことから、見始めで視聴をやめてしまう人もいるように思う。
画自体は見たとおりシンプルな線に単色の組み合わせで日本画のような印象だが、アニメとしての動きにはさすがノイタミナと言えるだけのクオリティもあり、これをどう評価するかによっても作品の印象は180度変わってくるだろう。登場人物も決して「カッコいい」とか「かわいい」でもない、青年誌ライクなタッチのため、見た目の人物の良さを作品の評価に直結させるような人には向いていないかもしれない。
逆に、見た目ではない、内面的な面白さや、今まで見たことのないような奇想天外さに楽しみを見出す人ならば、この作品に惹かれる部分は多分にあると思う。私はどちらかといえば前述した見た目ありきの考えに近い気もするが、最後まで見続けたことでこの作品の良さも分かってきたので、今後この作品を見るような機会があったら、せめて半分くらいまでは見続けてみて欲しい。
またこの作品を観ていると「ここまでは…」と思う一方で、どこか共感出来る部分も多い事に気づく。時に主人公の苦悩葛藤が自身のことのようで、それに対するツッコミや自虐になぜか見てるだけの自分がダメージを受けることもしばしば。作品自体がシュールさ全開故にこの一体感がなんとも言えない空気を作り出し、まさに観る人により千差万別な感情を抱かせる作品と言えるだろう。
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